Copyrighted:運命の選択肢 夢の超人タッグ編

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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~夢の超人タッグ編~」『キン肉マン 夢の超人タッグ (2) 戦慄の覆面狩り!!編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2006年9月16日、ISBN 978-4-08-109261-1、100・198・274・332頁。

[P 100]

目次

タッグは二度とやるまいと心に決めていた!?

画像: 初のマッスルドッキング。驚愕する超人たち。

至高の合体技マッスル・ドッキングの初披露シーン。インパクトは絶大だ。

「タッグは昔からずっとやりたかったんですけど、以前にアメリカ遠征編で描いた時にすごく難しいと感じましてね。2人ずつ組んで戦うといっても、リング内の描写としては結局1対1のシングルマッチ形式になる。それにタッチの手間も煩わしいので、その時はあまり読者にウケなくて。だからもう二度とやるまいと決めてたんです。でもある時、新日本プロレスにアドリアン・アドニスボブ・オートンJr. という2人組が来て、彼らがそれまでのタッグの概念を破った。ツープラトンの攻撃というのを彼らが初めてやったんです。タッチしても戻らない。それで2人で合体技を仕掛けるんですよ。それがタッグの常識を変えたんです。それを見た時に、ああ、これなら行けるかな、と」

でもそれって…厳密に言うと反則では!?

「ええ、反則です(笑)。だから漫画ではレフェリーをなくして、ほぼ常に2対2で戦う状況にして、決め技は全部ツープラトンにして。そしたら今までになかった新鮮な描き方ができるようになった。今度は読者にウケたというのは、そこが大きな要因でしょうね」

[P 198]

ビッグ・ボンバーズが活躍する可能性は…ゼロだった!?

画像: アシュラマンの侮辱に憤るビッグ・ボンバーズ

アシュラマンの暴言こそが、ゆで先生の本音だった!?

まずは四次元殺法コンビブラックホール&ペンタゴンというのは、それまでの活躍からすると大抜擢という感がありましたが?

「プロレスタッグの王道で、身軽な2人組というのは必ず出てくるんですよね。メキシカン・レスラーのコンビに多いような。そこをイメージした時に、真っ先に思い浮かんだ超人がブラックホールだったんです。それで、彼と似たような外見の超人を探してみると、やはり身軽なペンタゴンという超人がいて、それを組ませてみたんです」

なるほど、外見つながりだったんですね。悪魔超人正義超人の混成タッグということで、非常に衝撃的でもありましたが。

「そこは全く意識してませんでしたね(笑)」

メキシカンのイメージと聞くと、スカイマンという選択もあったんでしょうか?

「スカイマンも良いんですが、やはり並んだ時のインパクト優先で。ブラックホールにあわせてペンタゴンの四次元技も開発できたし、似たもの同士でうまく転がせたと思います」

次にモスト・デンジャラス・コンビ。この組み合わせも斬新でしたが…。

「これはもう、余った者同士で(笑)」

いや…もしかしてそうかな、とは思いましたが…(笑)。

「でもこういったコンビは読者も感情移入してくれるんですよね。いかにもすぐ負けそうじゃないですか。だから逆に頑張れ!…と。例えばドリフを見てると高木ブーを応援したくなるような(笑)」

それはすごいポジションですね!(笑)。しかしその線でいうと、さらに扱いの悪いコンビも…カナディアンマンスペシャルマン。彼らが本戦に出場できる可能性はあったんですか?

「それはゼロでしたね。あれは入替えを前提に出した、ただの賑やかしですから(笑)」

[P 274]

カメハメは読者の絶大な人気に応えての再登場だった!?

さて、次は2000万パワーズについてですが、当初はこのタッグも意外でした。

「典型的な大小コンビ。これも先のメキシカン・コンビと並ぶ、タッグの定番のひとつですね。バッファローマンを以前にスプリングマンと組ませた時もそうですが、僕らの中では彼にはブルーザー・ブロディのイメージがあって、そのブロディとジミー・スヌーカーの名コンビを意識したところはありました」

はぐれ悪魔の2人も大小コンビですね?

「いや、あれは単に六騎士の中から強そうな順に。ただ結果的にアシュラマンの相棒として、サンシャインの変幻自在ぶりがタッグだとますます活きましたよね。呪いのローラーも、アシュラマンがジャーマンを仕掛けた先に何か欲しいというのがあって、その先にサンシャインが待ち構えているというのがすごく絵になる。いいコンビだと思います」

そしてキン肉マンですが、まずテリーマンに逃げられました。

「最初からマシンガンズだと順当すぎるので、読者をやきもきさせたくて。それでテリーマンを同じアメリカ出身で荒々しいファイトスタイルのジェロニモと組ませました」

でもそこでまさかカメハメが来るとは…。

「意外かも知れませんけど、実はカメハメは読者からすごく人気が高かったんですよ。キン肉マンに唯一勝ってる超人ということで。だから再登場時には、やっと出てきた!…という反応で、初代グレートの人気も想像以上に高くて。それだけに、後にテリーマンと入れ替えるのがプレッシャーでね。グレートは初代の方が良かった!…って言われないようにしないといけませんし、その前にどうやってカメハメを退場させようかと(笑)」

[P 332]

ビッグ・ザ・武道の扱いには多少困っていた!?

画像: 武道のオーバーボディが剥がれる。

今やオーバー・ボディは、すっかり『キン肉マン』では常識に!?

先程までのお話を伺うにつけ、開始前からかなり設定を決め込まれていたようですね。

「ええ、だからこのシリーズは破綻も少なくて、始める時に決まってなかったのはヘル・ミッショネルズの中身くらいかな」

完璧超人という新勢力の構想も当初から?

「悪魔超人シリーズも一段落するので、新たな敵を出していこうと。そこでまずスクリュー・キッド&ケンダマンで前置きをして、いよいよミッショネルズの正体を明かす段になって。ネプチューンマンはすんなりと決まったんです。でも武道の方がね、なかなかね(笑)」

最初の武道は超人発表時のマイルドマンの姿でしたね。

「出したはいいけど、どうもサマにならないなぁと…」

そこで翌週にオーバー・ボディを脱いだ!しかしこのオーバー・ボディという発想自体がまず衝撃的でしたが。

「僕ら自身も "ようこんなことやるわ!" って笑ってましたけどね(笑)。でもそれを脱いでも、まだ防具着けただけのオッサンですし。武道には苦労しましたよ」

でも最近のゲームパッケージ等の描きおろしでは、武道が本当にかっこいいんですよね。

「そうですね。よくここまで成長してくれたなぁ…と今になって思いますけどね」


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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~夢の超人タッグ編~」『キン肉マン 夢の超人タッグ (3) 決着!!栄光のトロフィー編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2006年9月30日、ISBN 978-4-08-109270-3、124-126・166・322頁。

[P 124]

マグネット・パワーはツープラトンの副産物だった!?

今巻に収録されている『キン肉マン夢の超人タッグ編は、当時のプロレス界における "ツープラトン" というタッグフォーメーションの新機軸に衝撃を受け、シリーズ化が決定された。前巻のインタビューで嶋田先生はサラッとそう語られたが、その着想を発展させ、それを人間ではなく "超人" の戦いに昇華させて読者に魅せる…というのは、これまた様々な奇想天外なアイデアが要求される別の作業であり、そこには簡単に見過ごせない創作術の秘訣が多数、隠されていると思われる。そのあたりに切り込んでみたく、今回はまずそのポイントとなる、超人タッグ技の開発過程についてお伺いしてみた。

「マッスル・ドッキングが一番最初でしたね。この技は相棒(ゆでたまご・中井先生)のアイデアだったんですよ。どうせなら必殺技2つ合体させたらエエんちゃうん?って。確かにそれだと派手でインパクトもあるし、決まり技としての説得力もあるし、何より形が綺麗だった。まず最初にこの技を頭に思い描いたときに、このシリーズはイケる!という思いが一気に膨らんだ感もあります」

そこからどんどん他のタッグ技も考えられていった。そこで気になるのですが、タッグチームの組み合わせはタッグ技ありきで組まれていったようなところも?

「いや、それよりはまずタッグ編成の方が先でしたね。マッスル・ブラザーズの技は確かにキン肉マンの相方が誰であってもそれで決まりだったでしょうが、その他は超人の組み合わせを一通り考えてから、この組み合わせならどんな技が可能か…というところで考えていきました。ロングホーン・トレインもそうですし。そこはもう、いつも通りの行き当たりばったりですよ(笑)」

確かに既存のキャラはこれまでの超人同士の関係性などもありますからね。しかし新キャラの完璧超人を登場させた時などはその点どうでしょうか?

「スクリュー・キッドとケンダマンのコンビは、完全なタッグ屋でしたよね。だからそういうところもなきにしもあらずで出したんですが、新超人の目玉として出したネプチューンマンはハルク・ホーガンをモデルにしていたところもありまして、そこが先に立ち過ぎていた。なのでこれもタッグとして選んだというわけではなかったんですよ。だから逆に

[P 125]

画像: モンゴルマンを相手にクロス・ボンバーの準備、磁力バリバリ。

磁力の効果で迫力満点。しかし誰でもマネできてしまうという至高の必殺技クロス・ボンバー!

武道を育てるのに苦労した、というのもあるんですが(笑)」

やはり、いくら面白そうな設定があっても何よりキャラクター性が大事、という主張は崩されなかったと。

「そういうことですね。それでホーガンの得意技であるアックス・ボンバーを何とかタッグ技に絡めたくて考えたんですが、担当編集と話を進めていくうちに、じゃあ交差させて2人で仕掛けてみてはどうだと」

それがクロス・ボンバーですね。

「ええ、でも最初は単純すぎてカッコ悪いかなぁとも思ってたんですよ。それでマグネット・パワーというのを出してきまして」

ではあのマグネット・パワーは、最初はクロス・ボンバーの演出のためだけのものだったんですね。

「なんとか迫力のある演出ができないかと考えて、そういえば磁力というのは身近でわかりやすいものだけど、まだ使ってなかったなと思いまして」

なるほど。思えばあのクロス・ボンバーは3人いれば誰でもできそうな単純さと裏腹に、有無を言わせない迫力が同居していました。これは先生が常々おっしゃっている "要素はシンプルだけどカッコイイ" というお考えと繋がるところもありますが、その主義をいざ実践するのは、実は非常に難しいことだと思います。でもその答えの秘訣が、先程のお話の中に隠れているような気もするのですが。

「あの頃は子供たちもクロス・ボンバーごっことか、ロングホーン・トレインごっことか、さすがにマッスル・ドッキングは無理でしょうけど(笑)。そうしてよくマネをして遊んでくれていたようですよね。そうして読者に身近なものとして接してもらえるというのは、とても大事なことだと思っています」

ところで、そのマグネット・パワーですが、後々は完璧超人の強さの最大の秘密になっていきますよね。サンダー・サーベルですとか、地球逆回転で時間を戻すとか、もうとてつもないパワーに(笑)。

「そこから色々なことに転用できるな、とあれこれやってるうちに、どんどん話が大きくなっていきまして。しかしこうして見返すと、勢いのある作品ですよね(笑)」

あの最後に出てきたアポロン・ウィンドウというのも、またすごいところに目をつけられたなと。

「大阪の仁徳天皇陵とかの、前方後円墳ですか。あれは個人的に小学生の頃から鍵穴の形に見えてたんですよね(笑)。それでいつかうまいこと漫画にも使えないかと思ってて。鍵穴大きすぎてどうしようもないかとも思ったんですけど、まぁムリヤリ合わせてロックして。ホント勢いのある作品ですよね(笑)」

画像: サンダー・サーベル初登場。

雷を固めて投げつけるという信じがたい技!そりゃモンゴルマンもビビるわな。

[P 126]

キン肉マン以外の覆面(マスク)はすべてはがすつもりだった!?

今回のシリーズでは "マスク" がひとつの重要なキーワードとなっていた。そこを起点にした仕掛けが数多く施されていたのも、本シリーズの大きな特徴であったが、そこには先生の大きな意図が潜んでいた。

「キン肉マンがマスク超人だという設定はもちろん前々からあったんですけど、これまでの悪魔超人シリーズでは、そこをうまく活かせていなかったような気がしていたんです。しかしうまく焦点を当てて転がせば、これはテーマとしてはかなり大きなものを秘めている。素顔を隠して戦い続けることの悲哀ですとか、色々なドラマが描ける。それを使わないのはもったいない、とは以前から考えていたんですけど、このシリーズでようやくそこを前面に出すことができました」

確かにその通りですね。キン肉マンももちろんそうですが、グレートの正体がばれるかどうかのスリルにはかなりハラハラさせられましたし、特にモンゴルマンやアシュラマンがマスク超人であることに関連しての過去エピソードなどは、それだけで主役を食うほどの感動を呼びました。

「超人の数だけ秘話があるといった具合で。もっともモンゴルマンの霊命木のマスクの秘話など、話を転がしながら付け加えていった設定も多いんですけどね。特にアシュラマンについては、前シリーズにも増してどんどん人気が高まっていったので、描いてるうちにこちらも感情移入してきまして。見た目もますますカッコよくなっていきましたし。魔界のプリンスという設定も、やはりただの悪いヤツというだけではなく、キン肉マンに対抗しうるバックボーンを背負って戦っているんだ、というのを見せたくなってきたからなんです。それで最終的には仮面をつけていたというところにまで発展していきました」

アシュラマンの涙面は感動でした。

「あれを初めて出した回は、かなり読者の評判も良かったですね」

サンシャインも本当は優しくてイイヤツなんですよね?

「ええ、彼はイイヤツです(笑)」

しかしマスクというのは超人最大の秘密でもあるわけですが、当初は一体どこまではがそうと考えていらっしゃったんでしょうか。

「キン肉マン以外全部ですね(笑)。それはもう最初から決めてました」

ではロビンマスクウォーズマンも?

「ええ、でも特にロビンのマスクをはがすのは、描く段になってからかなり勇気がいりましたけどね(笑)」

あれはショッキングでした。

「でもこのシリーズではすべてさらけ出していくことで、その超人ごとのドラマを作っていこうと考えていましたから。読者の反響も実際にすごかったし、賛否両論ありましたが、結果としては、それぞれうまくいったんではないかと思ってます」

画像: あらわになるロビンの素顔。

初公開となったロビンマスクの素顔!暗くてよく見えないが、まぶたは二重らしい。この回の読者の反響も相当なものだった。

[P 166]

完璧(パーフェクト)超人は、完璧(パーフェクト)に悪役を演じきってくれた!?

「ヘル・ミッショネルズの2人は出した当初、読者からすごく嫌われていたんですよ(笑)。自分が神に近い超人であるとか、他の超人を下等呼ばわりするところとか、とにかくあまりにも偉そうでエリートぶってるのが気にくわないと。あんなヤツらやられてしまえばいいんだ!という意見が大半でしたね」

狙い通り、といったところでしょうか?

「ヒールはヒールで狙い通りなんですけど、それにしても予想以上の嫌われようで、少し戸惑いましたよね(笑)。悪役といっても、たいていはある程度の支持があるものなんですけど。例えばアシュラマンなんてその典型で、読者の声に同調して改心させていったところもあるんですが、ネプチューンマンに関してはそういう声が少なくて。だから僕らも開き直って、もう徹底的に悪役を貫いてもらおう、と」

しかしそれでもネプチューンマンは、最後の最後で改心できましたね。

「この頃はキン肉マンと戦った超人は改心する、という流れが期待されてましたからね。だから最後にはそうしましたけど。でもネプチューンマンはそれまでに、改心するようなそぶりがほとんどなかったでしょ?」

確かにバッファローマンの時などと違って、ネプチューンマンはネプチューン・キングの登場まで完全悪役でしたよね。そこからの悪役ぶりはキングの独壇場でしたが…(笑)。

「やっと武道のキャラが立ったと思ったらこんな形でね(笑)。ネプチューンマンは改心させた甲斐あって後に人気出ましたけど、さすがにキングはねぇ。もうあそこまで悪いと改心させてもキツイでしょう?(笑)」

画像: テリーマンに鉄柱攻撃するキング、うらぎられた!とネプチューンマン。

ネプチューンマンも引くほどの悪党ぶり。やはりキング様はひと味違うな!グロロロロー!

[P 322]

「タッグ編 = 友情シリーズ」というテーマだけは決して揺るがなかった!!

これまでも作品のテーマとして "友情" を掲げられてきましたが、このシリーズではそれがひときわ輝きを増した感がありますね。

「壊れた友情を取り戻していく、という過程がこのシリーズの構想の大前提であって、その芯だけは揺らぐことがありませんでした。タッグで組んで戦うということで、友情を描くのにこれほどの好材料はないわけですから。そこでグレートの中身を途中で入れ替えたりなど、長期の展望まで最初から見据えて考えてましたよね。まぁゆでたまごにしては珍しく、ですが(笑)」

いや、先生はいつも謙遜してそうおっしゃいますが、毎回もともとのアイデアはかなり豊富でありながら、途中でより面白い設定を見つけられるとバッサリ以前の設定は切り捨てられる度胸もお持ちである。そのライブ感が作品の魅力の秘訣だと思うのですが、ただ、友情という不変のテーマだけは今回ぶれようがなかったということではないでしょうか?

「細かい設定にこだわりすぎると、結果としてつまらなくなるんですよね。だから芯が一本あれば、あとは転がしながらが一番いいと思ってますので、あまり決めてかからないようにはしています(笑)」

現在、週刊プレイボーイで『II世』のタッグ編も連載中ですね。そちらも楽しみです。

「マシンガンズや2000万パワーズといったおなじみのタッグも、懐かしい技など駆使しつつ、新たな魅力を見せていきます。時代を超えた戦いにぜひ期待してください」

本日は大変ありがとうございました!

画像: 亡きカメハメに見守っていてくれとキン肉マン。

『キン肉マンII世』でのタッグ編にも、大いに期待すべし。

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