Copyrighted:運命の選択肢 第2回超人オリンピック編

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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~第2回超人オリンピック編~」『キン肉マン 第2回超人オリンピック編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2005年8月6日、ISBN 978-4-08-109016-7、471-477頁。

[P 471]

第2回超人オリンピックの展開はここで変わった!?ゆでたまご・嶋田先生に聞く、衝撃の裏話コーナー。

目次

幻の優勝候補超人……その名は「スマイルマン」!?

この巻に収録された第2回超人オリンピック編では、前回の超人オリンピック編に増して激しい戦いが多数繰り広げられた。結果としてこのシリーズ連載中に、作品人気は以前にも増してぐんぐん上昇。そしてそれ以降は常に安定して、圧倒的な読者の支持を獲得し続けることになった。つまり『キン肉マン』という作品全体を見渡した場合、このシリーズは重要なターニング・ポイントとして位置付けられるのだ。
だが決勝進出超人を見渡してみると、前回出場者とかぶるのはキン肉マンラーメンマンの2名のみ。ロビンマスクテリーマンなど、従来の人気超人をあえて外すことは大きな賭けだったと想像できるが……当時を振り返り、嶋田先生はこう語る。

画像: ウルフマンの大ゴマ。ハガネの体。

キン肉マンの新ライバルにふさわしい肉体美!!「今日からゼイ肉マンと改名しやがれ」は名言。

「新しい超人をどんどん活躍させたかったんです。アメリカ遠征編でやや読者の支持率が落ちたこともあって、様々な反省に迫られた直後でした。そこでまず方法論を元に戻そうと。それで担当編集者とも相談して、もう一度超人オリンピックを開催することにしたんです。しばらく休憩していた超人募集も大々的に再開しました。そうすることで、スタイルは昔に戻しつつも、心機一転して新たな気持ちでやり直す。そういう覚悟で臨みました」

確かにこのシリーズの第1話目で、いきなりウルフマンという大物超人が初登場しています。

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画像: エントリー超人紹介。テリーマン、ブロッケンJr.、ラーメンマン、ベンキマン

ウルフマンの登場直前に、ここでひっそりベンキマン初登場。

「彼はキン肉マンの新しいライバルとして、前から温めていた超人でした。当時は角界も千代の富士関(現・九重親方)を中心に盛り上がっていましたし、同じ日本代表の超人同士というのは面白い関係になるんじゃないかなぁと」

ウルフマンについては、超人募集採用者の名前が掲載されていませんね?

「このシリーズを始めるにあたって超人募集を再開したんですが、最初の頃はハガキが執筆に間に合わなかったんです。そういう事情もあって、ウルフマンは完全に僕らのオリジナルですね。ベンキマンもそうだったと思いますが」

ベンキマン、甘美な魅力がありますよね。上品ですし。

「いまだに気に入ってるんですよ、ベンキマン。こういう超人、描いてて楽しいから好きなんです(笑)」

古代インカ出身というのもかなり次元を超えててイカしてます。

「当時、あやふやな情報なんですけど誰かに聞いたんです。古代インカの遺跡でトイレの原型が発見されたとか。それでそのまま彼の地元と言うことに(笑)」

"古代" というのがすごいですね。

「あまり気にしないでください(笑)」

ところでその後まもなく、超人募集の採用発表がありましたが、そこでウォーズマンペンタゴンといった有力超人と同等の扱いで "スマイルマン" という超人が大きく紹介されています。でもその後は一切登場していないんですが、彼は一体……?

画像: 読者応募超人採用発表の見開き。

第2回超人オリンピック編に向けて発表された読者超人。一番右上がスマイルマン。扱いは大物っぽかったが。

「この超人は面白いことがたくさんできそうだと思ったんですよ。重要な役割を果たす超人として、ウォーズマンとどっちを活かそうかと悩んだくらいに!でもどこかでウォーズマンに競り負けたんでしょうね。いつからかすっかり存在を忘れてしまっていました(笑)」

では、もしかしたら彼がウォーズマンの代わりに大活躍していた可能性も!?

「充分にありましたね。ちょっともったいなかったかな?」

"ウォーズマンスマイル" にそのコンセプトが継承されているということは?

「特に意識はしてなかったつもりですが、もしかしたら無意識のうちに、そうだったのかも知れませんね」

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ペンタゴンはウォーズマンに勝っていたかも知れなかった!?

画像: ベアークローで引き裂かれるペンタゴン。

この描写でウォーズマンの方向性が確定した、と嶋田先生。

ではシリーズ開始当初は先のウルフマンが、決勝でキン肉マンと当たる有力な候補だったと?

「いや、別にそこまで先のことは考えていませんでした。もちろん彼もその候補の一人くらいには考えていましたけど、彼に限らず決勝戦の相手はペンタゴンだったかも知れないし、ブロッケンJr. だったかも知れない。試合をしながら、様子を見て決めていこうと思っていました。なので決勝トーナメントでは、作者でさえ実際に描くまで、どちらが勝つのかわからない試合が多かったんです(笑)」

ではそこでウォーズマンが頭ひとつ抜け出した理由とは?

「彼の場合は、キャラクターの役割として残虐描写を強調したんですが、正直やりすぎたんです。それで読者の子供たちに色々な意味で、鮮烈な印象を与えすぎてしまったんですよね」

ティーパックマン戦に始まり、次のペンタゴン戦でもひどい残虐ぶりでした。

「とりあえずティーパックマンには勝たせるとして、ペンタゴン戦はどちらが勝つのもアリだったんです。でも実際描くとなった時に、前戦の勝ち方があまりに強烈で反響も大きかったので、ここでもうひと押ししてみようと。でも僕らは最初、そこまで残虐に描くつもりはなかったんです。ところが当時の担当編集者からどんどんやれと推奨されまして(笑)。それで徹底的にやったら、前よりもっと残虐になってしまいました。ここでもう二度と引き返せなくなりましたね」

画像: バラクーダのアップ。

バラクーダの正体はロビンマスク。それは初登場時から決まっていた。しかし変わったなぁ、ロビン。

その直後、バラクーダの登場です。

「ええ、バラクーダはその勝ちが決まってからの後付けでしたね。背景にもっと大きなものを背負わせたくなって。ロビンマスクはしばらく出てませんでしたが、もう一度見たいという読者の声も相変わらず多かったので、ちょうどそこでハマったというところです」

それではペンタゴンが勝っていたら、バラクーダはペンタゴンの師匠に?

「それはわかりませんけど(笑)。逆にロビンの出番が二度となくなっていたかも知れないですし」

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悲運の英雄テリーマン!決勝進出の可能性はゼロだった!?

先程「新しい超人をどんどん活躍させたかった」というお話がありましたが、それでは一方の第1回超人オリンピックで活躍した超人の扱いについては、どうお考えだったのでしょうか?例えばテリーマンなどは、その直前の人気投票で1位を獲得していますが?

「決勝トーナメントに誰を残すか、というのは直前まで決めていませんでしたが、有力超人のなかでテリーマンだけは唯一、予選で落とそうと決めていました」

どうしてテリーだけそんな……?

「先のアメリカ遠征編で充分活躍してましたし、しばらく休養を取らせた方がいいかなと。それに今でもそうですけど、期待を裏切るのは昔から好きだったんです」

でもさすがはテリーマン。格は守ったまま見事敗退ですね。

「作者としても好きな超人ではありますからね」

しかし前回の超人オリンピックでも格を守ったまま見事敗退でしたが?

「全くついてないですよね(笑)」

あと、ロビンマスクは後に復活したとして他にもカナディアンマンスカイマンスカルボーズなんかも実は予選に出ているんですよね。

「出してましたっけ?(原作を読み返して)ああ、確かにいますねぇ」

ラーメンマン以外、すべて予選で人知れず敗退したようです。

「すっかり途中から存在すら忘れていたと思います。新しい超人を育てることで頭がいっぱいでしたから」

そこで唯一、キン肉マン以外に奮闘したラーメンマンなんですが。

画像: 東京駅新幹線ホーム。

東海道・山陽新幹線沿線読者の子供たちは、特に胸ときめくものが!?

「彼はブロッケンJr. との因縁もありましたからね。でもやっぱり決勝戦には新しい超人を……という風に考えていました。同じ対戦組み合わせを何度もやるのは、描いててツラいものもありますし。だからむしろ、どこで負けるのかということが問題でした。ブロッケンJr. に負けるという選択もあったんですが、ここは作者の愛着もあってふんばった。ところがその次のウォーズマンは、残虐路線が完全に確定して引き返せなくなった後でしたからね。そうなると運命は決まってたようなものですよ。まさに試合を進めるうちに展開が決まっていくという感覚です。あのゴングをベアークローがブチ抜いて、という描写も当時の担当編集者からどんどん行けと推奨されまして……今の少年誌なら怒られるでしょうけどね(笑)」

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伝説の予選競技「新幹線アタック」は砲丸投げの亜種だった!?

画像: 新幹線アタックの記録。ジョーズマン、ラーメンマン、カナディアンマン

記録のわかりやすさで演出!カナディアンマンもなかなかの成績だ!

ところでやや前のテリーマン関連の話に戻りますが、彼が予選落ちした「新幹線アタック」という競技もこれまたすごい発想でしたよね?

「予選の競技は、第1回のオリンピックでやりたくてできなかった、というものを主にやりました。それで水泳に続く競技として、投書は砲丸投げや円盤投げの類を考えていたんです。ところが普通の砲丸や円盤をただ投げたのでは面白くない。水泳をガソリンプールにしたような仕掛けを何か考えないと。そこで色々投げるものを考えるうちに、電車を投げるというアイデアが出てきて、それならわかりやすいし面白くなりそうだなぁと」

電車を投げるという発想がふと出ること自体、尋常ではない気がしますが……。

「要は飛距離を競うわけですよね。ならその結果の目印がわかりやすいものがいい。しかも彼らは超人ですから、スケールも何メートルとかそういった常識の範囲でなくてもいいと思ったんです。大阪まで飛んだとか、博多まで飛んだとか、そうして発想を膨らませていくうちに、駅を目印にすると非常にわかりやすいのではと。駅という施設は読者にとってもおそらく身近なものでしょうから。それで新幹線を投げることにしたんだと思います」

その後のローラースケートも楽しかったです。

「あれは最初、首都高速をコースに使用するつもりでした。そのために車を出して、何周も回って取材したんですよ。中央道まで出てみたり。でも忠実に再現すると複雑になりすぎる気がして。それで結局ヤメにして、特設コースにしたんです」

画像: 新幹線を止め子犬を助けたテリーマン。

今なお語り継がれる、テリーマン一世一代の名シーン。無冠の帝王の本質が、このエピソードに凝縮されている。子犬かわいい。

取材をすることで使えないことを知るというのも悔しい話ですよね。

「せっかく時間を割いた取材をムダにはしたくないものですよね。なのでその時に中央道から競馬場に寄り道したんですが、せめてそこの風景はムリにでも活かそうとして後で使用したんです」

ありましたね。超人の競馬シーン。サブタイトルにまでなっていますよね。

「あんなどうでもいいセレモニーに妙にページを割いているのは、その時の意地です(笑)」

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キン肉マンがマスク超人になったのはある大物の一言がきっかけだった!?

決勝戦のキン肉マンVSウォーズマンの試合の話を伺いたいのですが、ここで初めて、キン肉マンがマスク超人であることが判明しますね。

「僕もそれまで、そんな事実は全く知りませんでした(笑)」

どうしてマスク超人にしようと思われたんですか?

画像: プール水面に浮かぶキン肉マンのマスク。

決勝戦の直前、マスク超人だと判明。その流れで例の覆面はぎデスマッチへ。

「これは本当に偶然の出来事がきっかけでした。当時、取材で新日本プロレスの稽古場に伺ったんですよ。そこで色々見学させていただいて、ひと通り終わった後、選手の方々とみんなで食事に行くことになったんです。その席で、僕の隣に山本小鉄さんがいらっしゃいましてね。ありがたいことに『キン肉マン』を読んでいてくださったようで、マンガの話をさせていただいてたんですが、その時に彼がふとおっしゃったんです。"キン肉マンって、あれマスクでしょ?" って。そんな話は僕も知りませんでしたのでビックリしたんですが、いや、待てよと。これ、もしマスクだったら面白いなぁと逆に感心してしまいましてね(笑)。思えば昔から『タイガーマスク』のような話は好きでして。マスクマンであるがための、彼が抱える悲哀とか。そういったドラマが新たに作れるんではないかと、そこからどんどん発想が膨らみまして。それで実はマスク超人だった、ということにしたんです」

しかし小鉄さんはどうしてキン肉マンがマスクだと思われたんでしょうね?

画像: キン肉マンの顔の型を取るミート

小鉄さんの言ってたのはコレか?コレのことか!?

「いやぁ。それが一切わからないんですよね(笑)。でもおかげ様で決勝の大一番は、満足の行く演出ができました」

覆面はぎデスマッチですね。最後のウォーズマンの素顔は衝撃的でした。

「あのラストは相棒(ゆでたまご・中井先生)のセンスの勝利ですね。コーホーという呼吸音も彼のセンスでしたし、そういった二人の様々な意見が集約されてキャラクターが次第にできていくのは、いくつになっても楽しいものです」

キン肉マンの方の素顔公開予定は?

「そんなの永遠に秘密ですよ」

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パロ・スペシャルは担当編集者の完全オリジナル技だった。

画像: パロ・スペシャル初登場。

ちなみに『II世』の最新設定によると、この技はロビンマスクがウォーズマンに伝授したことになっているそうだ!?

決勝戦ではウォーズマンの "パロ・スペシャル" 、キン肉マンの "キン肉バスター" という、『キン肉マン』を代表する二代必殺技が初登場。その応酬もまた、この試合に大きな深みを与えている。その一翼を担うパロ・スペシャル開発の裏には、偉大な立役者が存在した?

「当時の担当編集者が僕らに負けないくらいのプロレス好きでしてね。それである日、ウォーズマンの新必殺技を考えているときに、こういうのはどうだ?と実演してくれたのがパロ・スペシャルだったんです。見たことのない技でしたので、なんですかその技は?と聞いてみたところ、彼が言うにはジャッキー・パロという実在のレスラーがこんな技を使っていたような気がすると。かなりうろ覚えだったようなんですけど。それでその通りの技を再現したのがパロ・スペシャルだったんです」

では原型になる技があったんですね?

「いや。ところが後でわかったんですが、どうもあやふやな記憶をもとに教えてくれた技だったのでよくよく調べてみたところ、本物のジャッキー・パロの技とは全然違ってたんですよね(笑)」

ということは、それは担当編集者があみ出したオリジナル・ホールドだったということなんでしょうか?

画像: イリューヒンにOLAPを決めるケビンマスク。

SPBC『キン肉マンII世』20巻より。これが "OLAP"。

「好意的に捉えるとそう解釈できないこともないです(笑)」

それはまたすごい偶然の産物ですね。

「で、いつか本物のジャッキー・パロの技をマンガに出そうと考えていて、最近の『II世』になってやっとその機会が巡ってきたんです」

それがロビンマスクの息子、ケビンマスクの必殺技 "OLAP" ですか。

「"PALO" の逆で "OLAP" です。本当は "PALO" の方が逆なんですけど、まあいいかな……と(笑)」

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