Copyrighted:嶋田隆司×小川賢太郎
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オリジナル: 「嶋田隆司×小川賢太郎」『週刊プレイボーイ 2008年35号』集英社、2008年9月1日、雑誌20671-9/1、170-173頁。 |
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『キン肉マン』と『すき家・なか卯』が、ギューっとタッグを組んだ記念対談!
『キン肉マン』生誕29周年を記念して、『すき家・なか卯』とのコラボが実現!! そこで今回、ゆでたまごの嶋田隆司先生と日本最大の牛丼チェーン・株式会社ゼンショーの小川賢太郎社長との夢の対談、『第1回牛丼サミット』をここに開催だぁ~!!
初対面ながら、格闘技会場ではニアミス!?
小川賢太郎社長(以下、小) まずは29周年おめでとうございます。すごいですね、ロングランで!
ゆでたまご嶋田隆司先生(以下、嶋) ありがとうございます。29周年といっても、あっという間でしたね。
小 最初、どういうきっかけで『キン肉マン』を始めたんですか?
嶋 集英社に赤塚賞というのがあって、それに高校2年生のときに応募したのがきっかけでした。相棒とふたりで高校を卒業するまでにどうしても漫画家になりたかったので、これが最後のチャンスやなって『キン肉マン』で応
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募したところ、準入選しましてデビューできました。
小 いきなりっていうのがすごいね。普通、長い下積み時代を経てようやくデビュー…とかっていうじゃないですか。いきなりデビュー戦からバシッといくなんてホントすごいですよ。初めて『キン肉マン』を描かれたのはいつなんですか?
嶋 小学校4年生ぐらいですね。当時からテスト用紙の裏とかに絵を描いて、休み時間にみんな呼んでデタラメなストーリーで語っていくってことをやってまして、その中から出てきたのが『キン肉マン』だったんですよ。
小 やっぱり当時からプロレスが好きだったんですか?
嶋 そうですね。親父の影響で小学校2〜3年の頃から見てました。
小 どのレスラーが好きだったの?
小 なるほどね。僕はプロレスに興味を持つのがちょっと遅くてね。ある人から "面白いレスラーがいる" って紹介されて一緒に飯を食ったのが前田日明で、彼と出会ってからなんですよ。いろいろ話しているうちに仲良くなって、ああ、プロレスって奥深いんだなぁと知ってね。それから会場に見に行ったりするようになったんですよ。
嶋 ひょっとしたら、どこかの会場で会ってたかもしれませんね。
小 ニアミスはあったかもしれないですね(笑)。そうそう、昔、東京ドームでUWFの試合があった時、ウチの会社で2千枚以上のチケットを売ったり
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もしましたよ。
嶋 『Uコスモス』ですよね。
小 さすがによく知ってますね~。その時、藤原組長の試合のプレゼンターをやったんだけど、組長が試合で勝ってさ、汗まみれのまま抱きついてきたから僕のスーツが汗まみれになってね。試合よりもスーツのほうに気がいっちゃって大変でしたよ(笑)。でも、格闘技の世界は浮き沈みが激しいけど、『キン肉マン』みたいにずっと人気を保っているというのはすごいことですよね。
嶋 プロレスファンはもちろんですが、 "プロレスは見ないけど、『キン肉マン』は読む" という人も多くて、なかには『キン肉マン』がきっかけとなって会場に足を運ぶファンも多いみたいなので、そういう意味では責任重大だなと思っています。
牛肉+米=牛丼は、人類が開発した最強タッグだ!
小 『キン肉マン』といえば、もうイコールといっていいぐらいに牛丼好きのキャラクターが定着していると思うけど、『キン肉マン』が牛丼好きになったきっかけはなんですか?
嶋 それは、僕らが牛丼を大好きだったからなんですよ。昭和50年代ぐらいの頃は、梅田や難波に出ると牛丼屋がチラホラあったんですが、当時はまだ牛丼自体、あまり馴染みがなかったし、値段もけっこう高かったんですよね。
小 先生、大阪出身なんですか?
嶋 そうですよ。
小 それで『なか卯』が出てくるんだ! 確か、『キン肉マン』の1巻でしたっけ? 漫画の中に「牛丼・うどん」って看板がある牛丼屋が出てくるんだけど、あれは『なか卯』ですよね? 僕らのグループなんだけど、「牛丼・うどん」っていったら『なか卯』しかないって思っていましたから。
嶋 そうなんです。僕らよく食べてたんですよ。それで赤塚賞に応募する時、『キン肉マン』のキャラをつくるにあたって「好きな食べ物が牛丼だったら面白いんじゃないか!」と思って。当時はまだ牛丼も流行ってなかったんですが、『キン肉マン』と一緒に絶対、牛丼も流行らせたいと思ってました。
小 なるほどね。当時は店舗もまだ少なかったし、牛肉の輸入規制もあったから、家庭で作るにも今の3倍くらいの値段がかかったはず。そういう意味では、今みたいに食べることはできなかった時代だよね。
嶋 地元に牛丼屋がないから、東京に出てきて牛丼を食べるのが夢だったという人もよくいたと聞きましたよ。
小 ところで、先生は今でもかなりの頻度で牛丼を食べているの?
嶋 47歳になりましたから、昔ほどは食べなくなりましたけど(苦笑)。それでも定期的には食べていますよ。
小 先生は牛丼に対して責任があるんだから頼みますよ(笑)。ハンバーガーばかり食べられては困るからね(笑)。
嶋 ハンバーガーは3つぐらい食べてもお腹いっぱいにならないんですよ。やっぱりお米を食べないと。ところで、社長は牛丼にどんなこだわりをお持ちなんですか?
小 まずは米だけど、米って本当にアミノ酸のバランスがいいから、塩をかけたものを一週間食べ続けても人は生きていけるんですよ。まさに "お米パワー"。小麦じゃそうはいかない。そうした米の中でも牛丼に適した米ってのがある。これは硬さがポイントなんだけど、うちでは最も牛丼に適した米を厳選して使ってます。
嶋 なるほど。牛肉はどうですか?
小 牛肉はねえ、人類が開発した最高の肉だと僕は創業の頃から言ってるんですよ。人類が苦心して、ようやくあれほどバランスのよい肉を手に入れたわけです。焼いてもうまいし、牛丼にしてもうまい!
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嶋 冷えてもうまいですもんね! 僕、冷えた牛丼もけっこう好きなんです(笑)。
小 そうでしょう。だから、人類が開発した最高の肉である牛肉とお米パワーの組み合わせは、食品の中でも最強のタッグだと僕は思っているんですよ!
漫画のキャラも店舗のメニューも最初はウケない方がいい!?
嶋 『すき家』の牛丼のメニューって、バリエーションが豊富ですよね。
小 これは先生のおかげでもあるんですよ。『キン肉マン』でもタッグマッチならではの妙味があるじゃない。だから、うちも最初、牛丼だけだったのをキムチとのタッグから始めて、それから3種のチーズとのタッグ。続いてマーボーナスとのタッグと、いろいろなタッグが生まれたんですよ。
嶋 そういったアイデアの最終決定は社長がされるんですか?
小 そうですね。社員からもいろいろなアイデアが出るんだけど、なぜかみんなが反対したのが売れる(笑)。最初のキムチ牛丼もそう。みんな、「気持ち悪い」とか「冷たいモノは乗せちゃダメだろう」とか抵抗するんだけど、やってみたら大ヒットで定番メニューになっちゃう。そのあたりって、『キン肉マン』にも当てはまることありますか?
嶋 そうですね。ラーメンマンとかも最初はザコキャラだったんです。でも、子供たちがものすごく支持してくれて、『闘将!!拉麺男』みたいなスピンオフ企画にもなりましたから。最初ダメかなって思うのがウケることは多々ありますね。だから、僕らはマンガを描く際、最初、捨てキャラでも何でもとりあえず登場させるという意識でやっています。まずは読者の反応を見てみようって。
小 先生は新しいアイデアをどこで考えているんですか? 僕は旅に出た時なんかに新しいアイデアが出てくることが多いんだけど。
嶋 日頃から絶えず考えてはいるんですけど、格闘技の会場に行って試合を見ている時にひらめくことが多いですね。やっぱり『キン肉マン』は技が肝になってきますから。キン肉バスターやキン肉ドライバーといった技は "できそうでできない技" ということで考えていたんですけど、まさか実際にやる選手が出てくるとは。やられるとチクショーって悔しくなりますね(笑)。
小 超人は先生方が考えたり、読者から募集もしてるんですよね?
嶋 そうですね。読者の応募は本当にすごくて、昔、クリーニング屋の2階に住んでいたんですけど、一度、ハガキで床が抜けたことがあったんです(笑)。だけど、どんなにたくさんハガキをいただいても、必ず全部に目を通してます。読者には本当に感謝ですね。でも、ハガキの数があまりに膨大すぎて、手の水分がなくなってしまったこともありましたけど(笑)。
小 ちなみに、僕はビビンバちゃんが好きなんだけど、彼女は応募なの?
嶋 違いますよ(笑)。
小 かわいいよね。でも163cm、43kgというのはちょっと物足りないよ〜(笑)。51kgぐらいはないと(笑)。
嶋 なんで知ってるんですか(笑)。そのビビンバとキン肉マンの間に生まれたII世が今、『週刊プレイボーイ』で連載中です。旧作は8年連載していたんですが、II世は10年目に突入しています。
小 II世の方が長いとは、それもすごい! そうそう、この後、ウチの厨房で牛丼を食べていただけますか?
嶋 マジっすか!?
小 マジっすよ(笑)。
嶋 ありがとうございます。今年はこれからいろいろな行事が目白押しなのでよろしくお願いします。
小 私もアニバーサリー企画に協力できてうれしいですよ。今日はありがとうございました。
しまだ たかし●1960年生まれ。『キン肉マン』原作担当。小学生時代に同級生の中井義則氏(作画担当)と出会い、中学生から合作でマンガを描きはじめる。1979年5月から週刊少年ジャンプで『キン肉マン』の連載を開始。現在は本誌にて『キン肉マンII世』を好評連載中
おがわ けんたろう●1948年生まれ。東京大学中退。1982年、牛丼チェーン『すき家』を全国展開するゼンショーを創業。現在、『すき家』は全国1054店舗、グループ会社の『なか卯』は全国363店舗を展開中(7月末現在)