Copyrighted:運命の選択肢 キン肉星王位争奪編

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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~キン肉星王位争奪編~」『キン肉マン キン肉星王位争奪戦 (2) ソルジャー登場&ゼブラ決着編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2006年11月25日、ISBN 978-4-08-109305-2、486・506・526・546頁。

[P 486]

ゆでたまご原作担当・嶋田先生に伺う『キン肉マン』製作秘話インタビュー。今回では王位争奪編初期の貴重な裏話を掲載!

目次

キン肉マン型の超人をたくさん出してみたかった!?

夢の超人タッグ編に続き始まった今シリーズ・キン肉星王位争奪編。初代『キン肉マン』のそれまでを総括するかのような大長編となったこの戦い、開始までの経緯をまず伺ってみた。

「団体戦というのは以前から考えていたんです。それまでのシリーズがシングル編、タッグ編という流れできていて、何か真新しくて面白い仕掛けが欲しいと思っていて。それで、何人かのリーダーがいて、それぞれがチームを組んで…という風にすれば、各々チームワークを見せることもできるし楽しいんじゃないかと」

しかもその試合方式がまた面白いですよね?単純に5対5だから計5試合というのではなく、柔道団体戦のような勝ち抜きスタイルで、先鋒、次鋒と次々に選手が出てくるのがわくわくします。

「外国では考えられない方式ですけどね。勝った1人が負けるまで延々と戦い続けなくてはならない、というのはよく考えると実に不合理な話ですから(笑)。でもこうしたおかげで、見せ方の幅が非常に広がったのも確かです」

チームリーダーがすべてキン肉マンと似た姿の超人ばかり、というのも迫力がありましたね。

「それまでの超人募集でもキン肉マン型の超人はたくさん送られてきていましたし、いつか一気に出してみたかったんですよ。例えば仮面ライダーなどでもV3やストロンガーといった同じ系譜のヒーローがたくさんいる。そういうパターンを意識してみました」

前のタッグ編ではキン肉マングレートがそのタイプの超人でしたが、彼の評判がよかったというのも大きいんでしょうか?

「そういうのもありますね。ただグレートはキン肉マンの仲間でしたから。ライバルとして出してみるのはどうだろう、という怖さはありましたけどね」

[P 506]

ミートくんの戦いはぜひ描きたいテーマだった!?

画像: ミート対ミキサー大帝、王子直伝火事場のクソ力。

大帝相手に互角以上の戦いを見せるミートくん。王子のことが本当に好きだった、というのが伝わるエピソードでもある!

キン肉マン・チームの最初の相手は精鋭揃いのマリポーサ・チーム。しかしキン肉マン側の初期メンバーはキン肉マンとミートくんの2人だけ!?
まずはそのような布陣にした意図を伺ってみた。

「まあ後々仲間が増えていく設定ではあったんですけどね(笑)。読者もいずれ誰かが助けに来るんだろうとは思ってたでしょうし。それはともかく最初2人だけにしたのは何より、一度ミートくんを戦わせてみたかった。こうなったらミートしかいない、という状況をつくって、彼の実力を見せたくて。これはぜひやりたかったことなんです」

かなりチャレンジングな展開ですね。

「戦ったことはないけど、今までセコンドとしてたくさん試合を見ている。そこを活かして正義超人見習いとして、先輩たちから吸収した戦法を駆使して、面白い試合を見せてくれるんじゃないかと。ミートくんは王子のバックドロップが一番好きで、だから決め技はバックドロップで…というのも決めていました」

その布石として、キン肉マンがミキサー大帝のネジを1本抜いておいた、というのもニクい演出です。

「さすがに完璧に勝たせるわけにはいかないので、そこはね(笑)」

でもそこに至る経緯として、キン肉マンが負けるというのも衝撃的でした。

「なのでそれも最初から考えていたんです。本当に強いヤツに負けるとダメージも大きいんですが、こんなのに負けないだろう…というようなヤツに足下すくわれて負けてしまうのならアリかと」

じゃあ先生の中では、ミキサー大帝はたいしたことないヤツだったんですね?(笑)。

「でも勝つことによってコイツがすごく立ってしまいましたけどね(笑)。後で聞くと読者的にはやっぱりキン肉マンの敗北は、僕らが思った以上に衝撃的だったようですね」

[P 526]

キング・ザ・100トンは対テリーマン用と決まっていた!?

画像: メンバー表のあぶりだし。

あぶりだしというやつさ!リングを照らすライトの熱で、副将と大将の項目が浮かび上がる!! ルール的にもOKだ!?

キン肉マンとミートくんが倒れ、後がなくなったキン肉マン・チーム!そこに颯爽と現れたのは…キン肉マンと最も古いつきあいの親友2人、テリーマンロビンマスクだった!?

「前フリはずっとやってましたけどね(笑)」

あぶりだしでメンバー表に追加される、というのは衝撃的でした。

「そんなことやりましたっけ?ああ、これは忘れてましたね…すごいなこれ(笑)。でもメンバー的には、最初からこの2人だと考えてました」

まずはテリーマンとキング・ザ・100トンの試合となりますが、しかしテリーマンは毎度毎度よく巨漢と当たりますね?

「わざとです。その方がテリーの持ち味を出しやすいんですよ。相手が小技を出してくるようなヤツだと、どうも合わない。こんな大物にも恐れずに向かっていくんだ、というところで、リング上での荒々しさが際だつ気がするんです」

あとは以前のインタビューでジェロニモについて、普通の人間同士の戦いっぽくなると必死さが伝わりにくい、とおっしゃっていたこともありますが、それはテリーマンにも共通してるのかも知れませんね。

「そうですね。だからテリーマンはジェロニモをかわいがってるのかも知れません」

そして大将がロビンマスク。彼が敵のボスと戦うという展開には震えました。

「やっぱり僕らの中でも正義超人のリーダーはロビンマスクだという認識だったので、これは特に違和感もなく、むしろそうあるべきだろうと」

それまで負けが続いていたロビンですが、このシリーズから大逆襲が始まることになりますね!

「意外と勝ってないんですよね、それまでに」

[P 546]

ビッグボディ・チームは物語圧縮の犠牲者だった!?

画像: おまえは今日からキン肉マンビッグボディと名のるのだ!

登場シーンは派手に大きく!この時点から扱い悪かったらマズイでしょう…と語る嶋田先生。

キン肉マン・チームとマリポーサ・チームの熱戦が続くその裏で、会津若松城では同じく1回戦、フェニックス・チームビッグボディ・チームの戦いがとり行われていた。…が、結果は一方的にもほどがある展開!同じ1億パワーの超人なのに、ビッグボディ様のこの扱いはなんなんだ!? その辺りの事情ついて(ママ)伺ってみよう。

「もう最初からやられ役ということで出したチームでしたね。だからキャラクターデザインも早かったですねー。アメフトのプロテクターみたいなの着せとけばいいや、という感じでもうやっつけで(笑)」

そんな、可哀相すぎます。

「いや、このシリーズを団体戦にしたのはいいんですが、同時に思ったのは、これはものすごく長いシリーズになるんじゃないかと。1チームが勝つまでに、単純に考えると最低で5試合。勝ったり負けたりを繰り返すとどんどん試合数が多くなる。そう考えるとちゃんと最後まで終わるのかなと不安になってきて。だからいろいろ短縮法も考えて、サッサと終わらせられる試合はサッサと終わらせることにしたんです」

なるほど、それがビッグボディ・チームの弱さの秘密だったんですね。

「フェニックスを残すのは最初から考えていましたし、もう一方のキン肉マン・チームの試合に集中したかったのもありますよね」

じゃあ先鋒のペンチマンなんて、まだねばった方なんですね。次鋒のレオパルドンなんてリングインから決着まで1ページでしたからね。

「造型はかっこいいんですけどね、レオパルドン(笑)」

ビッグボディの決勝時のセリフも悲しかったです。強力の神にそそのかされて…と。1億パワーの超人とは思えない発言でした。

「ビッグボディは技さえ考えていませんでしたからね(笑)。でも密かにファンが多かったということを後で聞いて、あまりにも意外でびっくりしてます(笑)」

それはもう…ある意味伝説の集団ですから。
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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~キン肉星王位争奪編~」『キン肉マン キン肉星王位争奪戦 (3) 壮絶死闘!超人血盟軍編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2006年12月9日、ISBN 978-4-08-109314-4、310-311頁。

[P 310]

キン肉マン以上に魅力のある王位継承候補が欲しかった!?

画像: 背を向け去るソルジャーに感動する4人。

優しくも気高いソルジャー隊長の人柄に、4人は心酔。それぞれの感激の表情が素敵である。

王位争奪戦シリーズの魅力を支えるシステムとして見逃せないのは、各チームごとに特色がくっきりと分けられている点だ。各チームリーダーである "運命の5王子" にはそれぞれ、彼らを保護する "邪悪の神" の名の下にキャラクター性や戦闘スタイルがしっかりと割り当てられており、それが各々の戦いの中で様々な仕掛けとなって活用されている。そのあたりの役割分担についてはシリーズ開始前の構想段階で、先生も相当練り込まれたのであろうと思われるが!?

「相手は5人いるわけですから、そこはもちろん敵としてバランスよく配置していかないといけないですよね。そこでまっ先に思いついたのが、いかにもパワーファイターといった感の、力が強いヤツ。そして身軽で空中殺法に長けたヤツ。どんな状況にも対応できるオールラウンドなヤツ。そういう候補を考えていくうちに、あともうひとり、キン肉マンの仲間を引き込むヤツがいたら面白いなと。キン肉マンよりも威厳やカリスマがあって、リーダーっぽくて、より王位を継承するのにふさわしいんじゃないかと思えるようなヤツを…。それがソルジャーだったんです」

それではソルジャーは、先生の中でも他の王位継承候補とは一線を画す、特別なキャラクターだったんですね?

「ええ。なのでキャラクターデザインの面でも、例えばマリポーサならメキシカンな覆面で行くぞ、というようにすんなり決まったんですが、ソルジャーはそのような役割を期待していたのもあって、固まるまで相当時間がかかりました。そうして色々考えて生み出したものだから、僕らもどんどん感情移入していきまして。実際、王位争奪

[P 311]

画像: ナイフを手の甲に突き刺すソルジャー・チーム。

ソルジャー・チームといえば怪行動も味のひとつ!結束の強さは完璧だ。

戦シリーズの中ではこのソルジャー・チームの試合が、作者としても描いていて一番思い入れが強かったですね」

チーム全員が一致団結して、光り輝いていました。名シーンの嵐です!

「キン肉マン・チーム以外の戦いでここまで盛り上がったというのは、シリーズ全体の流れの中でも非常に意義があったと思います」

大人しくなった超人を再生させたかった!?

画像: バッファローマンのタッチを受けるソルジャー、感動するキン肉マンたち。

なれ合いではない、ふたりの本物の友情の絆を目の当たりにして、キン肉マンらも思わず涙!

ところでそのソルジャー・チームと、本来の主役であるキン肉マン・チーム。ともに既存の人気超人で構成するつもりだったとのことですが、そこで気になる疑問が一点。人員を両陣営に振り分ける際、先生の中ではどのような基準で線引きをされたのでしょう?

「もともとの構想としては、キン肉マンに牙を剥いていたが大人しくなってしまっていたヤツを集めて、ひと集団作りたかったんです。バッファローマンアシュラマンはその典型ですね。ザ・ニンジャは直接キン肉マンと戦っていたわけではないんですが、元・悪魔騎士ということでそのような要素はあった。ただ彼の場合はそれ以上に、前々から非常に人気が高くて、読者からの再登場を望む声も多かったんです。面白い戦いも見せてくれそうだし。それでもう一度活かしたくなった、というのが大きいですね」

最も気になるのはブロッケンJr. です。彼の場合は残虐超人の息子ではありますが、他のメンバーと比べても、キン肉マンに相当近い位置の超人でしたよね。

「ブロッケンJr. は人気が高かったにも関わらずよい試合が少なくて、ややもすれば弱いんじゃないかというイメージもあった。でもキン肉マンの周りにいるのではなく、ソルジャー・チームという新天地に入れば、そういうイメージを払拭できて、むしろ活きるんではないかと」

確かにソルジャーの下での彼は、活き活きしていましたよね。彼のキャリアとしても、最高の戦いを見せてくれたと思います。

「それまではロビンマスクラーメンマンといった、他の超人の影に埋もれていた部分が出せたと思います」

まさに真・友情パワーの教えの通り、自立心が彼を成長させたわけですね。
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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~キン肉星王位争奪編~」『キン肉マン キン肉星王位争奪戦 (4) 3つの必殺技編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2006年12月23日、ISBN 978-4-08-109323-6、388-389頁。

[P 388]

決勝に向けてキン肉マン・チームを弱体化させたかった!?

画像: ジェロニモを加えてやっと入城するキン肉マン・チーム。

これが決勝に向けての新生キン肉マン・チーム。やや迫力に欠ける気がするのは計算のうちだった。

いよいよこの巻から始まった決勝戦!! だが強豪フェニックス・チームを前にして、キン肉マン・チームは前試合ゼブラ・チーム戦からの大幅なメンバーチェンジを余儀なくされてしまった!最強の相手には最強の布陣で臨みたかったところだが…なぜ出だしからこのような苦境を与えられたのか、まずはその辺りの事情から先生に伺ってみた。

「キン肉マン・チームの戦力を考えると、ゼブラ・チーム戦での布陣がこれまでの正義超人軍としては最強であり、なおかつベスト・メンバーなんだと思います。しかしだからと言って、決してそれで安定させたくはなかった。なので決勝に向けて、チームの編成替えはぜひやっておきたかったんです」

決勝前にテリーマンウォーズマンの2人が抜けましたよね。まずウォーズマンですが、まさか闇討ちでリタイアとは…。あまりにも意外すぎて、ビックリした読者も多かったと思われるのですが?(笑)

「それは今になってよく言われますね。あの扱いはヒドイ!と(笑)。でもこの頃は超人人気投票でもそれほど上位には来なかったし、ウォーズマンを好きな人がそんなにいるとは思ってなかったんです。あとマンモスマンの怖さをここで再度見せておきたかったのもありますね。だから今にして考えると、彼の活躍を楽しみにしていた人には悪いことをしてしまったなと思います(笑)」

そしてテリーマン。練習中に負傷と言うことで出番がありませんでしたが、彼も立派なエース級の超人です。もしや後で使うことも考えていらっしゃったのでは…?

「そうですね、ピンチになったら後で出すかも知れなかったんですが、結局は使いませんでした。ただ最初のマリポーサ・チーム戦で

[P 389]

も出だしはキン肉マンとミートの2人だけでしたが、こうして主力を削ったのはそのときと同じ理由からですね。この頃はキン肉マンだけでなく、各正義超人個々にファンが付いていて、それがほぼ全員そろったゼブラ戦の布陣では、これに勝てるチームはないだろうと。負けさせることさえ難しくなっていた。なのでキン肉マン・チーム危ないぞ、という雰囲気はやはり出しておきたかったんです」

そこで新たなメンバーとしてジェロニモが加わります。

「まぁウォーズマンの替わりがつとまるかどうかまではわからないですけど…新たなやられ役として(笑)。でもこれまでのジェロニモだと読者からも本当にただのやられ役だと思われてしまうので、決してそうではないと。少したくましくなったジェロニモ、という意識で描きました。もちろん、ジェロニモに愛着があったから出したんですよ?(笑)」

そうして始まった決勝第一試合のサタンクロス戦、まさかいきなり先鋒でキン肉マンが出てくるとは思いませんでした。

「決勝だからキン肉マンは当然、大将として出てくるだろうと。そういう定石や、読者の思惑の裏をかきたかったんです」

でも最後はキン肉マンとフェニックスの一騎討ち、という流れは外せないですよね?

「それはもちろんそうですね。まぁその辻褄は…どこか途中で埋めればいいやと(笑)」

アシュラマンの頭は描き直していた!?

画像: 冠を取るアシュラマン。

これが問題のシーン。アシュラマンが初めて王冠をとったコマだ。全体的に大仏ヘアーだった…。

画像: ミートを救うサタンクロス、回顧するアシュラマン。

これが描き直した後のアシュラマンの頭。怒り面、冷血面でそれぞれ形が違う。

そのサタンクロス戦の最中、ピンチのキン肉マン陣営に新たな味方として待ちに待ったアシュラマンがやってきます!

「これはサタンクロスとの関わりもあるし人気もあるしで、読者から大いに期待されていましたから。さすがにそこまで裏切るわけにはいかないですよね」

しかし再登場で忘れられないのは、王冠をとる場面…あれはかなり衝撃的でした。

「失敗ですね。バッファローマンのツルツル頭と並んで、これは評判悪かったですよねぇ。確かに1回目に出した時の絵は良くなかったんです。だからすぐに次の回では描き直していて、少しは良くなってるんですよ?僕ら1回目ヘンな絵になると、2回目平気で直しますからね(笑)。最初のパンチパーマみたいな頭が衝撃的でずっとそう思われているかも知れないんですけど、実はそうじゃないというのはわかってもらいたいと」

しかしそのアシュラマン、あくまでサポート役という扱いでしたが、アタルの遺志を継ぐものとして、彼がキン肉マン・チームに加わるというのはなかったんでしょうか?

「やらなかったけど、そういうことも可能でしたよね。さっきのウォーズマンにしろテリーマンにしろ、改めてあの頃は贅沢に超人を使っていたと思います。でも他にも後にネプチューンマンを復活させようとか色々考えていましたし、そこは様々な兼ね合いの結果ですよね」

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オリジナル: ゆでたまご「これがゆで流創作術!キン肉マン―運命の選択肢― ~キン肉星王位争奪編~」『キン肉マン キン肉星王位争奪戦 (5) 最強助っ人サムライの美学!編』集英社〈ジャンプリミックス ワイド版〉、2007年1月20日、ISBN 978-4-08-109331-1、328-329頁。

[P 328]

様々な舞台で戦わせることで『キン肉マン』の可能性を試したかった!?

画像: 裏技を完成させるミート、光る魔法陣リング。

セコンドが巨大なコントローラーを操作し、隠された防御パーツを解放していく魔法陣リング!

試合における舞台や仕掛けの面白さ、意外さは『キン肉マン』でもこれまで様々な形で描かれてきたが、本巻でも収録されている王位争奪シリーズ決勝戦ではより一層、その方向性が際立っていた感もある。今回の取材ではそこに注目したく、まずは第1戦のキン肉マン対サタンクロス戦、魔法陣リングという設定について先生にお話を伺ってみた。

「これは昔、僕らがまだ子供の頃の話ですが水木しげる先生の『悪魔くん』という作品がありましてね。主人公の少年が魔法陣からメフィストという悪魔を呼び出すシーンがあるんです。そのときに描いていた魔法陣が子供心に非常に印象に残ってたんですよ。その記憶が、魔法陣リングの発想のヒントになったのは確かだと思います」

なるほど。しかもその魔法陣から出てきたのは、ディフェンド・スーツという装着具でした。これまた『キン肉マン』の中ではかなり特殊なアイテムでしたよね?

「ええ、己の肉体のみで戦うというのがキン肉マンの基本的なスタイルではあるんですが、たまにはこうして遊べるコスチュームを着けて戦わせてみたら、どうなるんだろうと。それと当時、ファミコンが大流行していたのでその要素も取り入れてみたかったんです」

コントローラーを操作してディフェンド・スーツの欠片を集めていくというシステムですね。最後は裏技で一気に出しましたね。

「あの裏技というのは当時、僕らもかなり衝撃を受けました。子供たちの間でも大きな話題になっていたので、ぜひ漫画のネタとして使ってみたくなったんです」

しかしそのディフェンド・スーツ。非常に複雑な構造で、デザイン面でも相当苦心されたのではないでしょうか?

「これは本当に苦労しました。しかもせっか

[P 329]

画像: 崩れるジャングルジム、フェニックスの高笑い。

ジャングルジムでの摩天楼デスマッチ。だがここにも卑劣な策が施されていた!理不尽すぎるフェニックスの罠が炸裂!!

く作ったから試合後もしばらく着けておくことにして。でも毎週この衣装を描くというのもそれはそれで大変でしたよね(笑)。会場の大阪城ホールというのも当時できたばかりで、長州VS天龍のシングルマッチがここで行われて話題になった頃だったんですが、そうやって新しい要素をどんどん取り入れていこうとしたのがこの試合でした」

その意欲的な試みのままに次のラーメンマンプリズマン戦も、ジャングルジムを利用した珍しい舞台での戦いでしたね。

「これはニューヨーク取材に行った直後というのもあって、摩天楼デスマッチと言うことで描いたんですが、ラーメンマンの特性も活かせるし、やはりこういう戦いは今までやっていなかったなと。この舞台設定を思いついたときに、まだまだ『キン肉マン』でやれることはたくさんあるなと改めて思いました」

フェニックスは根性が曲がりきっていた!?

画像: ビビンバにキスするフェニックス、唖然とするキン肉マン。

あまりに意外すぎる展開!主人公のキン肉マンでさえ、呆気に取られて対応に困る有り様だ!?

そうして新要素をどんどん採用された点には、強い攻めの姿勢が感じられますね?

「そうですね。『キン肉マン』という作品の新たな可能性を常に模索しながらでしたね」

そこで、これまでになかった要素としてぜひお伺いしたいものがもうひとつありまして。フェニックスビビンバの唇を奪う場面なんですが…あの回はかなり衝撃的でした。

「これはあえてやってみたかったんですよね(笑)。そのためのわざわざ王妃候補のビビンバを出してきた、とまでいうと語弊がありそうですけど。というのは、ただ勝った方が王位を戴冠するだけでは何か切迫したものがないんです。そうではなくて、勝った方が他のものも全部手に入れるんだと。要はキン肉マンの全てをフェニックスが奪ってしまうんだぞ!というのを強調したかったんです」

それでこのシーンというわけですか…。

「ええ、フェニックスはあまり良い人生を歩んでこなかったので、こういうことも平気でやります」

かわいそうに。ひねくれてしまったんですね。実際この辺では知性というより悪知恵が目立ちました。罠をいくつも仕掛けたり、何か妙に姑息な…。

「あまり良い人生を歩んでこなかったので、そういうことも平気でやります(笑)」

先生、フェニックスが嫌いなんですか?

「いえいえ!(笑)。そういうわけじゃ決してないんですけどね(笑)」

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[P 268]

『キン肉マン』のラストシーンは違う形になるかも知れなかった!?

画像: 『II世』より。キン肉星へ帰還するキン肉マンを見送る大勢の超人。

『II世』より抜粋。初代の最終回はこうなるかも知れなかった!?

「連載を終わらせようと思ったのは、フェニックス・チーム戦の中盤あたりでした。イリミネーション・マッチを始めた頃はもう、完全に終わらせる方向で描いてましたね」

しかしその当時はまだまだ、人気も絶頂の頃だったと思われるのですが…?

「当時のジャンプでは、連載は人気の高いうちにやめるのが美しいという美学があったんです。巻頭カラーで最終回を迎えるのが最も理想的で。それとこの頃は完全にシリアス路線になっていて、本来の持ち味であるギャグなどもやりにくくなってきていた。シリーズ自体も長くなりすぎていて、戦いの雰囲気も息苦しくなっている。ちょうどやめる時期に来ているんじゃないかと」

しかしそう伺うと、最終決戦では昔からの盟友が消え、前シリーズの強敵が仲間となり、師匠を乗り超えた後、最大の敵を倒す。計算された美しい流れで来ていますね。

「いや、それでもやっぱり僕らは行き当たりばったりなんですよ(笑)。だから本来考えていたラストとは違う終わり方をしてるんですよね」

ええ!? じゃあ本当はどんな終わり方を考えていたんですか?

「本来は、全てが終わったキン肉マンキン肉星に帰るというシーンにしたかったんです。でもミートくんは同行しないで「僕は次の危機に備えて地球に残ります!」という…」

それはまさに現在連載されている『II世』の初期設定と同じですね。

「そうなんですよ(笑)」

[P 288]

最終回はどんなにページがあっても足りなかった!?

画像: キン肉マンにニードロップするフェニックス、心臓停止。

最終話直前の回のラストのコマ。ここからあと1話でどうやって終わらせようか、先生も苦悩!!

じゃあ、本当はキン肉マンとフェニックスとの一騎討ちの後に、そんなシーンが描かれるはずだったんですね!?

「ええ、抱き上げて終わるんじゃなかったんです。でもそのシーンまで描けるかどうかわからなくて。実際に最終回を描く1か月くらい前から、最後は大増ページでやらせて欲しいと話をしていて。普段は毎週19ページなんですが、最終回だけは41ページにしてもらって。それだけあれば考えているところまで全部収まると思いますと。でも、実際描くと全然収まらなかった(笑)。最後の週も本当に行き当たりばったりで、どこで終わるか自分でもわからなくてドキドキしながら描いてましたよね。なんとか試合終了まで入っただけでホッとして(笑)。だから『がんばれ元気』のように非常に綺麗な終わり方をしている漫画はいいなと思うんですが…でも、あの『あしたのジョー』だって試合後、唐突に終わってますよね?だけどこれが凄くかっこいい。当時描きながらそのことを思い出したんです。強烈なシーンやメッセージさえあれば、ラストは描けるなと。まぁ言い訳ですけど(笑)。でも僕らにしては珍しく、見開きで扉も描けましたし、大増ページで最後を飾れたのもありがたい話ですし。最終回は巻頭カラーでもいいよと言われたんですけど、それはスケジュール的に余裕がなかったので(笑)」

確かにカラーページは、普段よりさらに1週間スケジュールが早まりますからね。

「それよりもストーリーをできるだけ入れたいという思いがあって…。なのでモノクロでいいからページをたくさんとってもらえると嬉しい、という話をさせてもらったんです」

[P 308]

王位争奪編に続く新シリーズとして「未来超人編」という構想もあった!?

画像: ネプチューンマンセイウチンのコール。

ネプチューンマンも悪党に逆戻り!? 新世代超人セイウチンを従え、完璧超人軍の再興を宣言!

しかしそうして一番いい時期に惜しまれて連載終了。もったいないと思う反面、それが後々まで語り継がれる要因にもなってますね。

「そうですね。後に『II世』に繋がったのも、ここで終わらせたからなのかな、とは思います。次のシリーズとして "未来超人編" というのをやろうという構想もあったんですが」

ええ!? その "未来超人編" とは一体?

「未来の超人界がボロボロで、それを救うためにキン肉マンたちが時間を超えて戦いを繰り広げる、という設定だったと思います」

折しも現在、週刊プレイボーイで連載中の "究極の超人タッグ編" では、初代の超人と未来の『II世』超人が入り乱れての大混戦となっています。これはまさに、その構想を形にされたかのような状況ですが…!?

「多少そういうところもありますね」

ではもしあの頃、王位争奪編の続きが描かれていたとしたら…。そんなストーリーがこの今現在、連載中ということなんですね!?

「そうかも知れません。それに今となっては、読者サービスというニュアンスもありますね。これまでは『II世』という漫画を育てるため、初代の超人はあえてなるべく出さないようにしていたんですが、もうそろそろその縛りを外してもいい時期かなと」

初代と『II世』を合わせた究極の『キン肉マン』ストーリーであると!

「ええ、まさにそのつもりでコミックスの巻数も1から再出発しています。ぜひ期待して今後の展開を見守っていてください」

心から期待してます。頑張ってください!!
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