Copyrighted:超像大全 インタビュー
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オリジナル: 「ゆでたまご インタビュー」『超像大全』ホビージャパン、2006年3月31日、ISBN 978-4-89425-405-3、120-123頁。 |
――現在、『キン肉マン』のキャラクターがいろいろな形で数多くフィギュアとして立体化されていますが、どのような感想をお持ちですか?
嶋田「『キン肉マン』の最初の立体物というとキン消しがあるじゃないですか。その時代から考えると、今出ているものは全然違いますね。クオリティがすごいです。キン消しはあれはあれで味があったんですけど、まさかね、あれから25、6年たって、こんな風になるとは思わなかったよね」
――コミックス第1巻の著者近影で、「キン肉マンがテレビ化されて、映画だって夢ではないし~」と書かれてましたが、こんなリアルなフィギュアになるとは考えていなかったと。
嶋田「いやまさか、こんな時代になるとは思わなかったです(笑)、あと原作とアニメとで色が違ってよかったですよね、原作カラー、アニメカラーってバージョン違いが出せますし。」
――確かにこれでフィギュアのバリエーションも増えていますよね
嶋田「そうなんだよね、マニアやコレクターにとっては、種類が増えることは嬉しいだろうね。」
――原作連載時に、これほどの超人やコスチュームバリエーションが立体化されることを想像していましたか?
嶋田「いや、ぜんぜん思い浮かべていなかったですね。結構頑張って作っていただいてて、逆にこんなものまで立体化するのかと思うものもありますよ。」
――それは何ですか?
嶋田「アクションフィギュアですけど、ビューティー・ローデスとか、何をするんやと。」
中井「こっちが売れるのかと心配しましたよ。」
――この「超像」シリーズは特にファンの間では評価が高いんですが、ヒットの理由をどう考えられますか?
中井「やはりこのクオリティの高さがよかったんだと思います。以前から、僕らも『キン肉マン』の、リアルでちゃんとしたものを作っていただければ、それは必ず良いものになるんじゃないかと、よく話していたんですよ。『キン肉マン』の連載が終わったぐらいからだと思うんだけど、かなり前からそう言う話はしていましたね」
――では、その頃から先生の頭の中には、『キン肉マン』フィギュアの理想型のようなものがあったのですか?
中井「いや、自分では作れないので、さすがにそこまでは(笑)。ですから、「超像革命」が出たときは、やっとこういうリアルでカッコイイ、僕らの考える理想型に近いものを出していただいたということで、すごく嬉しかったんですよ」
嶋田「僕らも最初に見た時、これは凄いと思いましたから。絶対ファンもコンプリートしたくなるやろなと、これに関しては確信がありましたよね」
――ところで、フィギュアの監修はおふたりでされているんですか?
嶋田「監修は基本的には僕がやっています。ただ、色とか細かい絵の部分に関しては、持ち帰ってふたりでやることが多いんですが、これがふたりとも覚えていないことがあって…(笑)。他の立体ものもそうなんですが、チェックは相当厳しくやってますよ、毎回。やっぱり顔が似ていないと絶対ダメなんでね。ですが、「超像革命」はちょっと違ったんですよ。「七人の悪魔超人編」を最初に監修で見た時はビックリしたんですね。あっ、これはちょっとまた『キン肉マン』の、ゆでたまごのタッチとは違うなと思ったんですけど、逆にこれは妙な味があって、なんて言うのかな、原型師さんの、自分の持ってる『キン肉マン』観みたいな、そういうのが凄く出ていたんですよね。だからこれはチェックの段階であんまりいじくらない方がいいなと思ったんです。特にミートくんですが、本当に悲しさが滲み出ているところなんかは感心しましたね」
――原型師さんの解釈が入る面白さも、フィギュアの魅力のひとつだと思うのですが、ゆでたまご先生もそれを感じられたんですね。
嶋田「自分の知らなかった、『キン肉マン』観とか世界を引き出してくれてますから。確かに原作ともアニメとも違うんだけど、うまく世界観が出てますよね。これはラフの絵も凄かったんですよ。立体ものの監修の時は原型とラフを両方見せていただくんですが、原型の出来が悪いと大体ラフが良くないんですよ。トレシングペーパーで適当になぞったようなラフで、ですから原型師さんもあまり情熱が無いし。そういう時は、中井くん自ら描いたりすることもあるんですが、やっぱりこれに関しては何も文句が無かったです。逆にあれこれ言って、原型師さんが迷われるのが嫌やなと思ったぐらいですね」
中井「うん、そうですよね。旧シリーズのタッチを忠実に再現すると、やっぱりとんでもない物が出来上がってしまうと思うんで……。だからあの、なんて言うんですかね、原型師の方もキン肉マンをよく熟読されているというのが、伝わってきますよね。だから「七人の悪魔超人編」を見ていると、バッファローマンの凄みというか怖さというのがよく出ていると思うんです。むしろ、こういう方法の凄みの出し方もあるんだなということで、勉強になりましたよね。なので、『キン肉マンII世』で、そのへんもこっそり生かさせていただいてます」
――立体になることで見えてくるかっこよさや面白さがあると思うんですが、「超像」シリーズでそれを感じる部分はどんなところですか?
嶋田「リアルな筋肉がこうパッと三次元で出て来ると、見ただけで凄いやん! というところですね。絵にはできないし。」
中井「そうだね、絵ではできないからねぇ、背中から見ることはないですしね。立体にしてみてこのシーンがこんなにかっこよかったんだと、初めてわかる部分がありますよね。うーん、本当に凄い。」
嶋田「原型師さんが好きなんだと思うんだけど、アトランティスの登場回数が多いシリーズだよね。あまり目立っていたキャラクターじゃないけど、あのアトランティスを立体で見た時なんかは、実はアトランティスてかっこいいんや、という再発見がありましたね。こいつまた『II世』で出してこようって。なあ。そういうのあるよね」
中井「当時の絵ですからね、未熟なものを、よくぞここまでかっこよく引き出してくれたなっていう。あの当時、こういう絵を描いていれば、良かったんでしょうけども、まだまだそんな技量がなかったもんですからね」
嶋田「こういうのを見るとまた描く意欲が出てきますよね。このパロスペシャル(ビッグヴィネットパロスペシャルを見て)で言うと、まあ、マンガではパッと絵で描けるけど、立体物としては難しいんやって、絵のウソがあるから」
中井「本当はね、この足の所がね」
嶋田「だからこれをね、ちゃんと再現してくれているのは、かなりキツかったと思う(笑)。あとは、効果線なんかのエフェクトを立体で再現しているのもビックリしましたね。躍動感がありますよね」
中井「なんていうんでしょうか、フィギュアの域をちょっと超えてしまっていて、芸術の域まで達しちゃっているのかなっていう。そこまでのクオリティにされる方はいらっしゃったのかもしれないけど、ちょっと自分の知る限りでは初めてだったので。現代のミケランジェロて言ってもいいぐらいなんじゃないですかね」
――余談ですが、このウォーズマン対バッファローマンのパロスペシャルって、原作では一瞬で技が解かれてしまいましたけど、こういった一瞬のシーンをうまくまとめている点はどう思われますか。
嶋田「そうだよね、すぐに解かれちゃったんだよねこのシーン。でもこのバッファローマンの顔とか凄いよね。この一瞬をうまくインパクトのある立体にしてくれるのは嬉しいですね。ウォーズマンの顔が3種ついているのも面白いしね。」
――実は私の周りの人間で、『キン肉マン』という作品はあまり知らないのに、このパロスペシャルのフィギュアを見て感動している人間がいたんですよ。すごい、すごいって。
嶋田「ということは、新規の『キン肉マン』ファンも獲得してくれているって事かな(笑)」
――ご自身で何か「超像」シリーズの様な立体化をしてみたいと思ったりしますか?
嶋田「いや、やっぱりですね、体のことをよく知らないとできませんし、二次元と三次元とは違いますからね。一度キン肉マンをしっかりと作ってみたいというのは、前々からありましたけれどね。」
――先生が作ってみたいと考える立体物と比べてこの「超像」シリーズはどうですか?
中井「そうですね、もちろん感性の違いはありますから、自分は自分なりの完成した姿って言うのがあるんですけど、これはこれで躍動感があって、こういうやり方もあるんだなっていうのはありますよね。僕は「めちゃめちゃかっこいいキン肉マン」っていうのをやりたかったので、ポーズの付け方にしても彫刻として置いておきたくなるもの、そういったイメージの物が欲しいですね。」
――このシリーズの原型を担当している原型師さんは、実際にレスラーの方を呼んだり、美術館でヒントをつかんだり、資料集めに3ヶ月かけたりするそうですが、先生と方向性が似ているということになりますか。
中井「そうなるでしょう。」
――「超像革命」は、原作を思い出させるシチュエーションの切り取り方が魅力のひとつなんですが、そのへんはいかがでしょう?
嶋田「ひとつでちゃんとシリーズのお話が出来上がってるじゃないですか。これは面白いなと思いますよね。ただ単体で技をかけているだけじゃなくて、ちゃんとストーリーがあるから、飾ってみて楽しいなと。僕はあんまりフィギュアは飾らないんですけど、これは飾ってますね」
――ここまで、この「超像」シリーズのいいところを語っていただいたのですが、逆に「ここはもうちょっとこうしてください」みたいな部分はありますか。
嶋田「ないですね!」
中井「あの、ひとつ細かいところですけれども、ラーメンマン(超像可動)の体型がもう少し細いんじゃないかなって。ちょっとマッチョすぎますよね。まあこれはこれでカッコイイんですけれどね。」
――先生方でしたら、どんなシチュエーションを立体にしてみたいですか?
中井「キン肉マンがウォーズマンをキン肉バスターで決めたところは凄く思い出に残っているシーンなので、あそこをフィギュアにしてほしいです。あともうひとつ思い出にあるのは、魔雲天をテリーマンがブレンバスターで抱え上げたシーンなんかは好きですね」
嶋田「僕はアレかな、ウォーズマンとキン肉マンの試合。二回目の超人オリンピックの一番ラストの扉絵あったやんか」
中井「ベルトをかかげている絵?」
嶋田「そうそう、あのちょっとふり返りながら。コーナーのターンバックルに乗っている。あのシーンが好きなんで立体で見てみたいです」
――扉絵はかっこいいものが多いので、立体化されると面白いですよね。
嶋田「でも「七人の悪魔超人編」なんかは扉絵みたいですよね。いろんなものが詰め込まれていて、一目でストーリーがわかるという」
――扉絵も魅力的なんですが、残虐シーンも『キン肉マン』の特徴じゃないですか。実現するかは別として、そういう残虐フィギュアというのはどうですか?
嶋田「僕、ブロッケンマンがラーメンマンに真っ二つにされるところ見たいなぁ。あとはウォーズマンがラーメンマンの脳天をスクリュードライバーで貫くところ。あれは子供がみんな恐がってね。敵キャラを際立たせるようにしているんですけどね」
中井「でも凄いよね、アレは」
嶋田「担当編集がやれやれ言うんですよ。ペンタゴンがウォーズマンに切り裂かれるところを描いている時なんかは、血が足りないって、担当編集が自分でブワーって墨を原稿にかける勢いやったよな。あれは、初代担当のアデランス中野さん、本当にいるんですけど、その人の趣味なんですよ」
――逆に友情パワーのフィギュア化なんてどうでしょう?
中井「……難しいでしょうね。絵でも難しいですからね」
嶋田「でも友情のシェイクハンドとか立体でやったら面白そうやな」
中井「なるほどね。」
――この「超像」シリーズには可動フィギュアもあるんですが、動かしたりしてみましたか?
嶋田「チェックの時は動かしたんだけど、並べている時に壊れそうだからほとんど動かしていない。僕うまくフィギュア組み立てられないんですよ(笑)」
――このような可動フィギュアで見てみたいシーンはありますか?
嶋田「そうですね、マッスルスパークが見たいですね。あれ技が二段階になっているじゃないですか、だから上でも下でも両方とも再現できるようにして。」
――「超像革命」シリーズではこれから「超人オリンピック編」が予定されていますし、今後は「王位争奪編」も出てくることでしょう。どんなところに期待していますか?
中井「王位争奪編にはキン肉マンソルジャーが出てくるじゃないですか、ソルジャーをどんなふうに作っていただけるかなていう期待がありますよね。ソルジャーには思い入れがあるんですよ。一歩引いている自分があって、しかもシブくてかっこいい」
嶋田「ソルジャーはチーム自体が、もの凄い人気あったからな」
中井「そうですね、チームごとに作っていただくていうのもいいかもしれないね」
――もし、ご自身で『キン肉マン』フィギュアをプロデュースされるとしたら、どんなものを作ってみたいですか?
嶋田「等身大シリーズ!(笑)」
中井「ガンダムでもデカいのあるじゃないですか。なかなか高価になると思いますけどね。数十万円みたいなね」
――等身大フィギュアは特注すると数百万円かかることもあるらしいですよ。
嶋田「でもスター超人だけは欲しいね」
中井「欲しいね。キン肉マン、ロビンとテリーマン。リングごとリアルに再現してて、キン肉マンがバッファローマンにキン肉バスターなんて、凄い迫力だろうね」
嶋田「凄い迫力やろうね。それから、トーナメントマウンテンとか五大城の舞台装置をそのまま立体化しても面白いね」
中井「その中に小さなフィギュアを入れて、それぞれの試合が再現されているというのも、いいかもしれないね」
――そうですね、『キン肉マン』は舞台の仕掛けも凄くいいですものね。
嶋田「『キン肉マン』は舞台装置命みたいなところがあって、まあ思いつかないところから絞り出すんですが、まあ結構適当なんですけど中井くんがなんとか絵にしてくれるんですよ」
中井「けっこう困ることがあるんですよ。本当に。」
――舞台装置を立体化したら、もちろんリング下に剣山を並べたいですよね。
中井「剣山描くの大変なんですよ。王位争奪編のお城も取材で全部回ったし、名古屋城と姫路城の合体とかもう勘弁してくれよって感じで。」
嶋田「でも、舞台装置の立体化ってかなりデカイなぁ(笑)」
――ところで、この本には原作のシチュエーションにない、テリーマンがアシュラマンにキン肉バスターをかけているフィギュアが付くのですが、原作にないものの立体化についてはどうお考えですか。
嶋田「大歓迎ですね。面白いですよ。『キン肉マン』という作品自体が行き当たりばったりていうか、破綻の多いマンガですから。プリプリマンみたいに、出てきたり出てこなかったりするキャラクターも多いし。だから原作に無いシチュエーションの立体化でも全然構わないし面白いと思う。幻のキン肉マン対テリーマンなんかやってほしいよね」
――で、実はお願いがあるんですが、このフィギュアには基になるラフがないんですね。それで、先生にラフを描いていただけないかと……。
中井「これを描くんですか? 原型師さんの方が上手いんじゃないですか? こういうリクエスト初めてですよ」
――ラフを描くため中断――
嶋田「でも、これホンマにシーンにあったような感じだよね」
中井「こんなシーンあったけなと思いましたよね。立体を見てラフを描くなんて初めてだったんですけど、どうでしょう? いや、立体と比べて見劣りしたらどうしようかと思って(笑)」
――ところで、この中井先生のお仕事場には、大量のフィギュアが飾ってありますし、先生がコレクターだという噂があるんですけど?
中井「いや僕、『キン肉マン』以外は集めてないですよ。昔はこういうのは無かったですからね。せっかく出していただいたんで、しっかり飾っていこうかなていう」
嶋田「でも昔フィギュアとかは集めてたよな。ビッグジムとかサイボーグ1号とか」
中井「あれ、集めてたのかなぁ? その頃から、『キン肉マン』のように筋肉質なものにやっぱりちょっと興味があったんでしょうね」
――では、キン消し時代から並べて飾っていたというような?
中井「いや、それは無かったですね」
嶋田「あれ、もらえなかったもんな。今だったらちゃんと商品くれるんですけど。僕、キン消し並んで買いましたもん」
中井「何が出てどうなっているかなんて全然わかりませんでしたから。オモチャ屋さんで初めてこんなの出てるよって知るんですよね(笑)」
――こういったフィギュアが作品にもたらす相乗効果のようなものってありますか?
中井「やっぱり作品を後押しというか、支えにはなってるでしょうね。」
嶋田「それにね時々、打ち合わせのときにフィギュアを使って二人で技の確認をしたりしてるのよ。」
中井「『キン肉マン』じゃないけどペプシマンのアクションフィギュアなんかも使ったりして。結構参考になる。」
――「超像革命」のメタルフィギュア購入者プレゼントに応募されたという噂もあるんですが?
中井「それも記憶にないんですけど……。ひょっとしたら、ウチのスタッフが内緒で送ったのかもしれませんね」
嶋田「でも、ネット通販でよくフィギュア買ってるもんな。それでメーカーの人にバレて(笑)」
中井「商品が出るとすぐ見たいものでね、ついつい買ってしまうんですよね」
――逆に、先生がフィギュアを買ったことがわかると、メーカーさんとしてはサンプルを送っていないのか? と慌てるらしいんですよ。
中井「だから最近は、買わないようにしています(笑)」
嶋田「ところで、ここには全種類飾ってあるの?」
中井「全種類は無いね。どうしても全部は飾りきれない」
嶋田「時々ここに来る人が、ここショップだと思ってお金出す人いるよね」
中井「いるね、いや、これ売り物じゃないんですよって」
――ここへ来たら欲しくなるファンも多いでしょうね。もう手に入らないものもかなりあるんで。
中井「そこのプラネットマンが凄い値段みたいですね」
嶋田「これ? (飾られているプラネットマンフィギュアを見上げて)」
――先生も、レア度とか気になさるんですか?
中井「いや、スタッフが教えてくれるんですよね。値段を聞いてエッーて驚くんですけど」
――最後にファンにメッセージをお願いします。
中井「みなさんの応援と、いろんなご意見が、また新しい『キン肉マン』の可能性を引っ張り出してくれるんで、またこれからもよろしくお願いしたいですね」
嶋田「『キン肉マンII世』も今やってますんで、一気にこの「超像」シリーズでII世までやっていただいて、旧作に思い入れのあるファンの方が多いと思うんですけど、『キン肉マン』、『キン肉マンII世』通じて、ケビンマスクが人気あるんで、やっぱりケビンと万太郎の超人オリンピック決勝をぜひ再現してもらいたいです。あと凶悪なセイウチンも見たいです」